パソコンは出荷台数減少でも出荷金額は増加で推移
今回は、パソコンの出荷動向をお届け🤲🏻
パソコンの出荷統計を発表しているのは、
前回と同じく民生用電子機器の国内出荷実績を公表しているJEITA(電子情報技術産業協会)です。
集計は会員メーカーによるもので、参加企業は富士通クライアントコンピューティング、NECパーソナルコンピュータ、レノボ・ジャパン、Apple Japan、パナソニックコネクトなど8社。
⚠️SurfaceのマイクロソフトやHP、DELL、ASUS、Acerなどの海外メーカーの出荷実績は含まれていません。
⚠️また、ドスパラやフロンティア、アプライドなどのBTOパソコンの出荷実績も入っていませんので、ご注意ください。
パソコンの国内出荷台数は前年割れ
次の表は22年度(2022年4月~)のパソコン国内出荷実績を表したものです。
前年同月比較で前年割れは赤字で示しています。
全体台数では4月からの10カ月で前年割れが8カ月となっています。
4月からの年度累計は前年同期比94.6%で、前年の実績に届いていません。
ここ数年間のパソコンを巡る動きを、ちょっと振り返ってみましょう。
政府は2019年にGIGAスクール構想で、生徒1人に1台のパソコン・タブレットの導入を打ち出しました。
この政策で学校向けのパソコン需要が急増します。
これと前後して起きたのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。コロナ禍は在宅からリモートへのテレワークを促し、学校でも集合授業からオンライン授業へのシフトがありました。
学校向けのパソコン需要に一般向けの需要も加わり、20年度のパソコン出荷台数は19年度比127.5%と大きく伸長しました。
しかし、学校向けは国の補助金や予算が付いており、期間も決まっていたことから予算消化後は需要が減少に転じることとなりました。
また、感染者の減少に伴いテレワーク需要も一巡。結果的に21年度は需要増の反動減で台数は20年度比59.3%と大きく落ち込みました。
22年度に入って減少率はやや回復してきましたが、それでも累計での出荷台数は前述のとおり、前年を割っているのが現在の状況です。
ノートパソコンの年度累計出荷台数は前年同期比95.1%
パソコンのタイプを大別すると、
デスクトップとノートに分けられます。
両タイプの出荷台数を時系列で表したのが
次のグラフです。
デスクトップは
4月からの10カ月で前年クリアが2カ月。
年度累計では前年同期比91.7%です。
一方、
ノートは同じ期間で前年クリアした月は5カ月。
年度累計では前年同期比95.1%とダウン率はノートよりも小さくなっています。
かつてゲーミングやクリエイター向けパソコンはデスクトップがメインストリームでした。
しかし、ノートでも高性能モデルが増加。
ノートとモニターをつなぎ大画面で操作するという使い方もあります。
デスクトップはゲームやデザインという一定の需要があるものの、ノートのシフトもあり、さらに需要を大きく底上げする要素が特にないため、今後の動向が気になるところです。
ノートにしても状況はデスクトップとさほど違いません。
OSのバージョンアップや先述のGIGAスクール構想など、一時的な需要増のトリガーはありますが、
恒常的に需要を増加させる要素がほしいところです。
出荷単価は前年同期比で約14%アップ
出荷台数は前年割れの月が多かった反面、全体の出荷金額で前年割れとなった月は10カ月間で4~5月の2カ月だけ。年度累計の出荷金額は同107.6%と前年実績をクリアしています。
同じ月で台数と金額の前年同月比を見ると、
出荷台数が前年割れでも出荷金額は伸長している月もあります。
分かりやすいように全体の出荷台数と金額をグラフ化してみました。
4~5月は出荷台数・金額とも前年割れですが、
減少率は金額の方が小さくなっています。
6月以降の各月を見ても同様の傾向になっています。
これは出荷単価がアップしていることを意味しています。
簡単にいうと
前年同月よりも1台あたりの平均出荷金額が上がっているわけです。
時系列で見ていくと、デスクトップは2020年に入った前後から出荷単価アップの傾向が見られるようになりました。ノートは2021年8月から同様の傾向で推移しています。
出荷金額を出荷台数で割ると、
1台あたりの出荷単価が算出できます。
では、この出荷単価の動きを
月ごとに見ていきましょう。
平均出荷単価はノートよりもデスクトップの方が高くなっています。
月によって差はありますが、
ノートよりも2万円弱~4万円弱ほど高めです。
明確な定義や分類はありませんが、ゲームやクリエイター向けのハイスペックモデルの構成比が増えているのではないかと考えられます。
平均出荷単価を前年同期と比べてみると、デスクトップ、ノートとも約14%アップしています。
約14%という単価上昇は、結構大きな上昇率です。
全体の台数が減っているのに平均出荷金額が上がる理由は2つあります。
一つは
前述した、より高性能モデルの構成比が増えた場合。
全体の出荷台数が減少しても出荷単価が高い高性能モデルの割合が前年同月よりも増えれば、平均出荷単価がアップするというケースです。
もう一つは
生産環境の変化により、単純に出荷金額が値上げとなったケース。半導体不足に端を発した部材高騰による価格上昇が、これにあたります。
現状では両方の要素が絡み合って出荷単価がアップしたと推測できます。
出荷動向から市場の動きを把握する際は、台数と金額の双方の変化を捉えることが重要です。
上記のとおり、前年よりもパソコンの出荷金額はアップで推移しています。従って、市場としては前年よりも好調といえます。
しかし、出荷台数は前年よりも減少傾向で推移しています。
コロナ禍の工場閉鎖や物流の停滞などで、出荷したくても十分な供給量を確保できなかった時期もありましたが、今は半導体不足も解消しています。
需要という観点で見ると、
現在の台数の減少はアクティブユーザーの減少と見ることができます。
ユーザーが減少すれば市場は衰退していきます。
これはパソコン市場にとって解決しなければいけない、大きな長期的課題といえるでしょう。
今後のパソコン市場がどうなっていくのかを考えるうえでも、引き続きパソコンの出荷動向を注視していきましょう。👨🏻🏫