企業によって分かれた家電量販店の2月売上
今回は家電量販店各社が公表している月次売上速報をお届け🤲
月次売上速報とは
POSによる受注金額を前年同月と比較したもので、
受注金額自体は公表されていません。
POSとは、
会計のときにレジでピッ!とやるアレのこと☝🏻
ピッ!とやった金額の総和が受注金額で、
決算の数字とは異なります。
なぜ、決算の数字と異なるのでしょうか💭
いくつかの理由があります。
まず、一般的に決算の売上には
メーカーからのインセンティブ(=販促協賛金)
も含まれているケースが多く、
純粋な商品販売だけではありません。
次に、2022年3月期から適用された会計処理の変更で、決算の売上はポイント還元相当額や延長保証などが減価償却的手法で差し引かれています。
そして、決算でいう売上とは
納品した時点で計上されます。
例えば決算日の31日に大型商品を購入したけど、
納品が翌1日だったというケースを想定してみましょう。
POSでは月末の売上としてカウントされ、
月次売上速報には含まれます。
しかし、決算日までに納品とならなかったため、
当期の決算には含まれないのです。
なので、
月次売上速報はあくまで前年と比較した動向を知ることを目的としている点にご注意ください。
なお、月次売上速報を公表している家電量販店は
エディオン、ケーズデンキ、コジマ、上新電機、ビックカメラの5社です。
家電量販店の月次速報に見る各社の実績状況
次の表は、22年度の各社の月別売上高前年同月比を表したものです。
赤字は前年同月実績に届かなかった、
いわゆる前年割れを示しています。
各社を並べてみると、2022年6月と9月は全社とも前年実績を上回りました。
逆に、7月は全社とも前年割れの月となっています。
これらの月以外は各社各様で、
同じ月でも企業によって前年クリアや前年割れが分かれています。
全体を俯瞰してみると、
前年比較で家電販売は微減~微増
という範囲のようです。
では、
月ごとの推移を次のグラフで見てみましょう。
ビックカメラは10月の前年同月比こそ各社より低かったのですが、8月と9月、11月、2023年1~2月は5社中で最も高い数値となっています。
また、22年度の11カ月間で前年割れの月は3カ月。
5社中で最も前年割れが少なく、2022年11月以降は4カ月連続で前年実績をクリアしています。
大都市圏のターミナル立地店が多いビックカメラは、コロナ禍で来店客減少という大きなダメージを受けました。
月次売上高速報を見ると、そのダメージから確実に復調してきたことが分かります。2023年1月は速報ベースで前年同月比104.0%、2月も同105.9%と伸長しています。
ちなみにビックカメラは8月決算で、2022年9月~2023年2月が上期にあたります。速報ベースでの上期累計は前年同期比103.8%で、前年実績をクリアしています。
速報ベースで2月までの累計販売はやや苦戦か
3月決算のエディオンは2022年4~9月の上期が前年同期比100.2%で、2023年2月は前年同月比103.0%と伸長。
10月からの下期は5カ月で同100.3%。
22年度累計でも同100.3%となっています。
エディオンと同じく3月決算のケーズデンキは上期が前年同期比98.1%で、2023年2月は前年同月比99.6%。下期累計では前年同期比同97.7%。
22年度累計でも同97.9%と苦戦している状況です。
上新電機は7月が前年同月2桁減と他社より落ち込みましたが、2023年2月は前年同月比105.3%でビックカメラに次ぐ数値となっています。
コジマはターミナル立地に比べて流動客が少ない郊外立地の特性を生かし、コロナ禍においては地域密着で業績を伸ばしました。
しかし、感染者拡大が落ち着きを見せるようになると、このアドバンテージも次第に薄れていき、2022年10月からは5カ月連続で前年割れが続いています。
2023年2月も前年同月比91.6%とで、グラフからも分かるように厳しい状況が続いています。
ビックカメラと同じく8月決算のため、
2022年9月~2023年2月の上期累計は
前年同期比98.1%で推移しています。
テレビは出荷、販売と前年割れで推移
各社は全体の売上高とともに主要商品・カテゴリーの状況も発表しています。次の表は、商品・カテゴリーの月別売上高を前年同月比で示したものです。
赤字は前述のとおり、前年割れを表しています。
ビックカメラは個別商品の動向ではなく、
カテゴリー分類での動向ですが、2022年8月以降は赤字が少なくなっており、前年に比べて好調に推移しているのが分かります。
上新電機とコジマは携帯電話も発表しています。
両社は22年度累計を公表していませんので、
累計での増減率は分かりません。
しかし、上新電機は2022年5月以降の前年同月比が大きく伸長しています。コジマも11カ月中前年割れは2カ月で、やはり伸長している状況が分かります。
JEITAの国内出荷統計では、2022年4月~2023年1月までの累計が前年同期比86.2%(スマートフォンは同94.7%)と前年割れ。
ただし、統計参加企業が非常に少ないため、
携帯電話市場は上新電機やコジマの速報値が示しているとおり伸長状況にあると捉えるのがよいかと思います。
商品の動向を全体像として捉えるため、
各社で共通している商品を抽出してみました。
まずは、家電量販店にとって主力商品の一つであるテレビです。
3月2日掲載の記事でも記述したとおり、テレビの出荷は前年同期比90%台と低迷しています。
出荷と販売はイコールではありませんが、
各社の速報値を見ると販売においても前年割れであることが分かります。
エディオンは2022年11月が前年同月比103.3%で前年同月実績を上回ったものの、その他の月は前年割れ。
2023年2月までの22年度累計では前年同期比89.1%で2桁減となっています。
同様に年度累計ではケーズデンキが同88.5%で、
上新電機とコジマも各月の推移から
やはり厳しい状況であると推測できます。
最近はチューナーレステレビの取り扱いも徐々に増えており、テレビの存在自体が転換期を迎えているのでしょうか。
引き続き、動向をウォッチしていきましょう。
エアコンもテレビと同様、
家電量販店にとって重要な商品の代表例といえます。
特にボーナス支給後の夏商戦においては、
エアコン販売の好不調が商戦の動向を左右するといっても過言ではありません。
昨年の夏商戦におけるエアコンの販売は各社とも6月が好調でしたが、7~8月は不調といえる結果に終わりました。
振り返ると、
2022年6月は下旬の気温が上昇して猛暑日が到来。
7月からの販売が期待されましたが、
その後気温が低下。
結果的に猛暑の時期がズレたことが、
7~8月の販売不振の要因といえます。
逆に12月は気温が低く、地域によっては厳しい寒さに襲われたため、エアコンの販売は好調でした。
このように、エアコン販売は天候や気温と関連して推移します。
ちなみに年度累計ではエディオンが前年同期比109.8%、ケーズデンキが同102.7%。上新電機は前述のように累計を発表していませんが、
2023年2月までの状況では前年実績を上回っていると推測されます。
冷蔵庫と洗濯機は高付加価値型が伸長
冷蔵庫の販売状況は各社によって異なっています。年度累計を公表しているエディオンでは前年同期比105.8%で、ケーズデンキが同106.6%です。
冷蔵庫は24時間稼動し、このところの電気料金の値上げを受けて、省エネ効果が期待できる高付加価値タイプが好調のようです。
消費者の省エネ意識の高まりは、
2022年12月から前年プラスの月が多くなっていることからも分かります。
洗濯機のタイプは乾燥機能の有無で大別でき、
価格差も大きいのが特徴です。
販売台数のボリュームゾーンは乾燥機能なしの全自洗タイプですが、乾燥機能を搭載したドラム式洗濯乾燥機が好調に推移しているようです。
年度累計はエディオンが前年同期比101.5%、
ケーズデンキが同101.8%で前年を上回っています。
JEITAが発表しているパソコンの国内出荷は、
1月までの年度累計で前年同期比94.6%。
ここには法人需要も含まれています。
家電量販店も法人向けの販売を行っていますが、
主力は個人向け販売。
2023年1月にサポート終了となったWindows8.1の
リプレースによる買い替え需要もあり、
2022年11月~2023年1月は好調に推移しました。
しかし、
2023年2月は明暗が分かれた結果となっています。
エディオン、ケーズデンキ、上新電機は
この3月が決算月。
3社とも決算短信で通期売上高は前年プラスと予想しています。
3月にどこまで売上高を底上げできたか、
次回の月次速報に注目しましょう👀