高校eスポーツメディアのディレクターが今までの高校取材や経験から「高校eスポーツ」についてちょっと考えてみた話。
まだまだeスポーツ部がある高校は多くありませんが、多くの高校生がeスポーツ選手として活動しています。年々STAGE:0(春から夏にかけて開催される大きな全国高校生大会)や全国高校eスポーツ選手権(秋から冬にかけて開催している全国高校生大会)といった大会の出場者は右肩上がりで増え続けています。
一方で、高校という教育機関の中でeスポーツに取り組むことに対しては、まだまだ根強いネガティブな意見が見受けられます。「ゲーム」のために学校の予算をまわすのか?といった疑問を持つ人は少なくないのです。
とはいえ、eスポーツ部に所属していない、あるいは所属していなかった人がほとんどな世の中では、「盛り上がっている」、「ネガティブな意見がある」といってもピンと来ないかもしれません。実際のところ、部員たちがどんなことをして、どのような環境で活動しているのか、想像がつかない人も多いのではないでしょうか?
まず今回のお話し、結論から言えば、話しますと「eスポーツ部」には従来の部活動とは異なった違った『ユニークな点』がある、ということについてのお話です。eスポーツ部は今まで私が学生時代にしてきた部活動とはどことなく異なる感じがあります。そして、その違いはとても興味深く、私の眼にはとても新鮮に映ります。
まだまだ新米のこねりですが、それでもこの1年、高校eスポーツのニュースメディア「BCN eスポーツ部」の一員として高校eスポーツに携わってきました。今まで取材に同行して高校生たちと直に話して感じたことや普段の仕事を通じて感じたことをもとに、eスポーツ部のユニークさについて少しお話しできればと思います。
(あくまでも個人的な考えですのんで、何とぞ、卒参考までにしていただければ!!!!笑)
① 活動や実践からみる「eスポーツ部」のユニークな点
先ほどeスポーツを『ユニーク』とは言いましたが、部活動に励む様子はいたってほかの部活動と変わりありません。校則や規則に従い、勉強をおろそかにしないことを前提に部活に取り組んでいるところがほとんどです(むしろ、勉強をないがしろにしているeスポーツ部とこをいまのところ見たことがありません。笑)。テスト期間中には部活動を休止する制度を設けた学校もあります。なかには、テストが近くなると部活の時間内に勉強時間を確保している部もありました。
他方、ネガティブ思想が残る学校では、eスポーツ部の部員たちの中には「ただゲームをやっているだけでしょ?」といった声にさらされながらも、めげずに生徒の模範となるような生活を心がけている、といった声もありました。成績面だけでなく、普段から無遅刻無欠席を意識するといった、あくまでも一学生としての生活態度を意識しているという話もありました。
私は今までバスケットボール部に所属しており、こういった部員たちが普段感じているネガティブなイメージを持たれることがあまりありませんでした。もちろん私も家族や学校の周りの人など部活動を応援してもらうために、礼儀や生活態度の指導は受けましたけどね。でも、ここまで意識したことは無かったかもしれません。部員たちが誰よりもeスポーツに真摯に向き合いたいからこそ、ネガティブに見られないよう努力する姿は、eスポーツならではの性質なのではないかなと感じました。
② ネット文化や効率化から生まれる(?)独特なカルチャー
次に感じたユニークな点はeスポーツ部ならではのカルチャーがあるということ。主にここでは「上下関係」が非常に希薄なことと、インターネット環境によって広がる人間関係について取り上げます。
まず「上下関係」について。ここでいう上下関係の希薄さとは、上級生が下級生の面倒を見ない、下級生が上級生を敬わない、ということではありません。各人がお互いに尊敬しあっているという方が正しいように感じます。例えば、ある学校では上級生が下級生に「敬語を使わなくていいよ~」と話しているそう。
こうした、上下関係と言うより、ある種友人のような関係を築く傾向は、ネットの特徴とゲームの性質が関係するのかな~と個人的に思っていたます。普通に利用するうえでは、ネットは匿名の文化が強く、年齢や性別といった背景が分からない相手と会話することもありますよね。そうした機会の多い人がゲームを通じて誰かと接すると、相手の年齢はさておき、“プレイヤーの一人”として相手を認識するのかもしれません。
取材していると、eスポーツ部に関心のある生徒はネットリテラシーが高い場合が多いし、こうしたネット文化で育ってきていることもあって、「上下関係とかどうでもいい」ってとらえている人が多そうな気がします。それに、団体で戦うタイトルだと、まず素早く端的に状況を伝えたり、話し合ったりする必要があります。チャットでも略語を使って迅速に情報を共有することが一般的ですよね。ゲームにはそうした事情があるので、敬語を使って情報を伝えるのが遅くなるくらいなら、むしろ敬語を使わなくてもいいよ~、といったことなのかもしれません。
さらに生徒たちネット環境が充実しているので、気軽にさまざまな交友関係を築くことができます。SNSを活用すれば、ゲームで対戦してみたい相手と気軽に連絡をとって練習試合や合同練習ができます。先生同士が交流する場で話ついでに練習を申し込むこともあるとのこと。なかには、日常的にOB・OGとオンラインでスクリムを組んで練習する学校があるという話も聞きました。こうしたコミュニティの広がりが県をまたいだライバル校関係などを生んでおり、高校生のeスポーツを盛り上げています。あらゆる部活動の中でもこうした交友関係の広さはeスポーツ部だからこそ。すごく興味深いな~といつも思っています。
③ 三者三様の学校のスタンス
eスポーツ部の活動にはそれを支える学校関係者や先生たちの協力は欠かせませんが、学校によって姿勢がさまざまなことも印象的でした。
パターンは大体3つ
※注意:その1のパターンはeスポーツのネガティブな側面を懸念しつつも、生徒がやりたいといっているなら許可しようというスタンス。eスポーツ部として風当たりが一番強いスタートのように見えるかもしれません。しかし、学校の先生のなかにはゲームと生活、学校の関係について真剣に向き合っている人もいます。また、eスポーツには高額な機材が必要になるので、みんなの教育のための資金をeスポーツ用の機材に投じてほしいという願いを聞くのが難しいという場合もあるかもしれません。難色を見せているからといって一概に先生、学校を悪者にしようという意味ではありませんので、理解のうえ読んでくださると嬉しいです。
まだまだ学校の中ではeスポーツは新しく、先生たちがどのようにくみ取り、生徒たちに何を示すのか、その姿勢には学校や地域差があります。なかにはeスポーツ部を学校の目玉として生徒を募集し、存続の危機を何とか回避できないか?と考えている学校もあったこと。eスポーツが子どもたちを引きつけ続けている事実、またeスポーツの教育的可能性から目玉になると学校側が考えるような事例も出てきているということがとても興味深かったです。こんなに学校によって受け取り方が多様になる部活動もそうそうないのではないでしょうか?
④ 足りない備品
さまざまな面から私が見てきた高校eスポーツを紹介してきましたが、最難関の問題はマジで備品が足りないこと。ハイスペックなゲーミングPCを部員分揃えたり、高速な回線を学校にひく必要があったりと、とにかく設備をそろえようとしたらとんでもない金額がかかってしまう…!! こんなにも高額な初期投資が必要な部活動、ないんじゃないかと思うので、そういった面がやはり他の部活動とは勝手が違うな……と少し思います。
本当だったらみんなでプレーしたい気持ちでいっぱいなんだろうけど、みんなでローテーションしながら数少ない機材でやりくりしている部をたくさん見てきました。中には機材がそろわなさすぎて顧問の先生や生徒が個人的に持っていたPS4やSwitchなどを持ち寄っている場合もあります。全員分の機材がそろわない課題とどのように付き合っていくのかは、もはやあるある過ぎる悩みといえるかもしれません。
ネットリテラシーや情報教育に役立つ投資ととらえて機材を買いそろえる学校もありますが、一部活として考えるとやはりそこまでお金が出せないところも多いのかな~という印象を受けました。
まとめ
「高校eスポーツ」というジャンルに携わって一年で、こんなにも発展途上で色んな課題や問題が多い、それでいてわくわくして可能性がある世界にどっぷりつかっていると、色々考えさせられます。もっとコアなファン、eスポーツ部OB・OG、身近で支えている先生や学校、保護者、そして何より現役のeスポーツ部に所属する高校生たちは、もっといろんなことを考えているんだろうなと思います。今はまだ異質な部分が多く、なかなか受け入れられないこともあるかもしれませんが、将来的にもっと発展した分野になるんじゃないかなと思って仕事しています。笑
んでもって、うちのようなメディアがどんどん高校生たちを追っかけて高校生たちの新たな活躍を発信していけたらな~と思っています。それが、例えば高校野球とか、高校サッカーのように、色んな人に愛されるものになるといいなー。
真面目にかきすぎたらめちゃめちゃ長くなりました。笑
いつも結構ゆるーく書いているんでたまにはこんな真面目な記事も許せ、サ〇ケ。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
いつも多くの方に読んでいただいてありがとうございます。
「BCN eスポーツ部」が高校のeスポーツ部を取材しているコラム、『高校eスポーツ探訪』、よろしければぜひ読んでいただけると記者も私も精一杯作っているのでとても喜びます。そして高校の短い時間をeスポーツという場で頑張っている選手をぜひ一緒に応援しましょう~!
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