家電需要は復調傾向。2022年の家電大型専門店の販売は前年同期比100.7%と微増
とりまここだけ見とけ通信 第1号
これは経済産業省が毎月公表している商業動態統計から家電大型専門店をピックアップしたものです。
商業動態統計は集計締め切り後、約1カ月で速報、1カ月半で確報値が公表されます。
ここでいう家電大型専門店とは、『500㎡以上の家電大型専門店を10店舗以上有する企業』いわゆる家電量販店が該当します。
公表までにタイムラグはありますが、家電量販店の全体的な販売動向を把握できる非常に有益なデータといえます。
まずは近年の商品販売額と店舗数の推移を見てみましょう。
時間軸は年度で、4月~翌年3月までの期間です。
2016年度から2019年度の販売額は右肩上がりで推移していました。
そして、新型コロナウイルス感染症が大流行した2020年度。
巣ごもり需要やテレワーク需要で家電の販売額は大きく伸長しました。
2021年度は需要増の反動減により前年割れ。
しかし、グラフからも分かるとおり、
実は2019年度の販売額を上回っているんです。
店舗数では2016年度から2021年度で164店舗増。
家電量販店はオーバーストアと言われていますが、新規出店は増えている状況にあります。
では、2022年度はどのような状況になっているのでしょうか。
家電市場~2022年度~
月別・カテゴリー別の販売額は
次の表のとおりです👇
赤字は前年割れを表していますが、AV家電は4月以降前年割れが続いていて、特にテレビに代表されるビジュアルの落ち込みが目立っています。
4~12月の累計では商品全体の販売額が前年同期比100.7%に対して、
ビジュアルは同88.4%。2ケタ減という厳しい状況です
家電大型専門店の月別商品販売実績
月別販売額の前年同月比のグラフは次のとおり。
7~8月の落ち込みはエアコン商戦が芳しくなかったためです。
家電大型専門店の月別商品カテゴリー構成比推移
全体の販売額を100%として、各カテゴリーの構成比を月別で表したのが次のグラフです。
各カテゴリーで売れる時期は異なるため、当然、月ごとの構成比は変動します。年度累計で見ると、21年度と比べて各カテゴリーの構成比は特に大きく変わっているわけではありません。
4~12月の累計で構成比がマイナスとなったのはAV家電。
前述のとおり、販売額は前年割れが続いています。
2021年4~12月累計でのAV家電の販売額構成比は14.2%でしたが、22年累計では12.7%。1.5ポイントダウンしています。
ビジュアルの構成比は10.9%から9.6%に落ち、
オーディオも3.3%から3.1%に低下しています。
構成比は他のカテゴリーとの相対比較ですので、仮に販売が好調であっても他のカテゴリーも同じくらい好調なら構成比は変わりません。
でも、AV家電は販売額自体がダウン。
これは2つの仮説が想定できます。
一つは、
販売台数自体が落ちている=需要減。
もう一つは、
台数はさほど変わらないが、販売額が落ちている=単価ダウンです。
BCNのPOSデータサービス「BCNランキング」でテレビを調べてみました。
2022年4~12月のテレビの販売台数・金額とも前年同期比2ケタ減で、平均販売単価も若干ダウンしていることが分かりました。
つまり、
販売台数が落ち込むと同時にテレビの売価もダウンしているのです。
動画コンテンツや見逃し配信サービスが増加し、スマホでコンテンツを視聴するユーザーも増えています。
今、家庭におけるテレビの位置づけが大きく変わろうとしているのかもしれません。
ちなみにPOSデータサービスの詳しい内容は、
こちらをご覧ください。👇
都道府県ごとの商品販売額
商業動態統計では都道府県ごとの商品販売額も公表しています。各都道府県の月別販売額の前年同月比を示したのが次の表で、赤字は前年同月実績割れです。
各都道府県とも赤字の月が多いことが分かります。
9月は四国~九州が前年割れとなりましたが、
これは記録的な雨量をもたらした台風の影響と考えられます。
12月は北日本で赤字が多く、雨や雪が販売に影響を与えたものといえるでしょう。天気や気温は昔も今も販売を左右する要因となっていることが分かります。
47都道府県の中で唯一、前年同月割れの月がないのが群馬県。
意外に思われるかもしれません。
実は家電大型専門店の商品販売額のうち、
ECの売上高は本社所在地の都道府県に含まれています。
つまり、
群馬県はヤマダデンキやベイシア電器などのEC売り上げが店舗売上高にプラスオンされているのです。
とはいえ、
ヨドバシカメラやビックカメラのEC売り上げも含んでいる東京は5月、10月が前年割れ。
ヤマダデンキのECが好調なのでしょうか、
決算発表まで待ちたいと思います。
さいごに
これから随時、家電商品や家電流通のデータをアップしていきますので、本マガジン「POSデータを見てみたらデジタル市場がわかった件」のフォローをお願いします。
最後に、『ダイヤモンド・ホームセンター』2月15日号では家電量販店の最近の動向を「家電量販店の住戦略」として特集しています。
誌名から分かるように読者対象はホームセンター業界関係者ですが、ホームセンター業界と無関係でも参考になる特集となっています。
証券アナリストや流通コンサルタントに加えて、私、BCN総研 風間も寄稿していますので、興味のある方はこちらをご覧ください。👇